河合 それは特に現代人の大問題とちがいますか。身体性を失ってるわけでしょう。考えてみたら、車を運転しているでしょう。車の運転は、みな、自分が運転できていると思ってるけど、本当は車のこと、ほとんど知らないわけですよ。どうしてこうなるのか。なぜこれを押せばこうなるのか、ほとんど詳しいこと知らないでしょう。テレビでもそうでしょう。だからね、現代人というのは、まったく中身を知らないで表層だけいっぱい使って生きてるわけです。だから、身体というのは空になってしまうんです。生きているということが空虚になる。ふっと、ものすごく虚しいというか、存在感というのがなくなるわけでしょう。いま言われたように、身体が感じるというか、身体が動くというのは、いま、きわめて大事なことじゃないですかね。神話を読むというよりは、神話の中に自分の身体が入らないと。
中沢 そうですね。身体が入っていける神話だと、僕は恍惚としちゃうんです。
河合隼雄×中沢新一 『ブッダの夢』
「なるべき理想の自分」は、写真や静止画のように時間が止まったイメージとして描かれ、その中で生きる時間を持ちません。理想の自分になれた瞬間が来ない限り、現在は仮の時間であり、そのためには1秒でも早く走らなければならなくなります。こうして人は「今を生きる事」を知らなくなります。
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