つよくも、ゆたかでも、かしこくもなかった頃のわたくしたちの国に、うつくしく、やさしく、おろかな人々が暮らしていた。 しんじられないかもしれない。けれどそれはほんとうのこと。
うつくしく、やさしく、おろかなり。 そんな時代がかつてあり、人々がいた。そう昔のことではない。わたしたちの記憶の底に、いまも睡っている。 <杉浦日向子>
けはいは、目に見えない。手で触れられない。におい、かおりで察するものだ。それは、嗅覚の能力ではなく、感性のちからだ。 「杉浦日向子」